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正しいと思ったら突き進む。後悔しない生き方をしたい。


アベユキヘ | ABE YUKIHE

フォトグラファー

辞めたくなることだってあったけど、写真が大好きだった。

人生は一度きりだからこそ、自分にわがままに。

そんなユキへさんの生き方は・・・

― 直感的に惹かれた、一枚の写真。

   写真の魅力に心を掴まれた大学時代。

物心ついた時からカメラには興味がありました。

でも、写真の専門学校ではなくて普通の大学に進学したんです。地元の福岡大学、それも、法学部法律学科に。カメラが本当に自分に合っているか分からなかったし、まずは色んな人に出会って刺激を受けながら、少しずつ自分の将来を決めてもいいんじゃないかなって思ったんです。

転機は2年生の時でした。写真部の見学に行ったんです。ちょうどモノクロ写真の展示をしていて、その中で子どもがアイスを食べている写真に心を奪われて。

勢いというか、臨場感がひしひしと伝わってきて。直感的にいいって思ったんです。撮影した先輩をすぐに呼び出して、写真部の話を聴いて、「入ります!」って即答しましたね。その先輩、実はのちのち部長になる方だったんですけど(笑)

大学の部活といっても部室も暗室も与えられて、フィルムの現像の仕方など基礎からしっかり学べる環境でした。ずっと暗室にこもっていましたね。ほんと、楽しくて。

2、3ヶ月に1回、部内で発表会もありました。課題テーマと自由テーマが与えられて、撮影してプリントして台紙に貼るところまですべて自分でやって。技術指導の先輩に提出すると「やり直しね。」ってビシビシ指摘されるという。加えて、何を考えて、どうしてこの写真を撮ったの?って、部員全員からも突っ込まれるんです。ちゃんと理由づけして説明するのは簡単じゃなかったですが、その分とても面白かったですね。

写真って自分の工夫次第でいくらでも変えられるんです。

その奥深さがたまらなくて、心を掴まれて、とにかく夢中になりました。ずっとカメラ漬けの毎日で、授業よりも写真でしたね(笑)

― 「スタジオに入りたいんです!早く返事を下さい!」

   ガッツで掴んだ、フォトグラファーへの一歩目。

ただ、そこからどうやって仕事に繋げようかなって迷って、東京で修行中の先輩に相談したんです。「東京で一人暮らしをするにも貯金が足りないし、卒業してとりあえず1年バイトしてから上京した方がいいですよね。」って先輩に話したら、「何を言ってるんだ。貧乏でもいいから東京で過ごせ。東京でチャンスを掴め。22歳の1年を無駄にするな。」って強く言われて。

東京にいる友人のところに10日ほど住ませてもらって、色んなスタジオにとにかく面接に行きました。ここぞという時の行動力は重要です。あるスタジオの面接で、「どうしてもスタジオに入りたいんです!でも、今回10日しか東京にいられないので、返事を早く下さい!」って催促したんですよ。当時は必死だったんですが、ありえないですよね(笑)

でも、そのガッツがいいねって採用になったんです。何が起こるか分からないものです。

そうして私の東京生活がスタートしました。

まずは2年間、フォトグラファーのアシスタント(スタジオマン)です。

ライトを組んだり荷物運びをしたりしながら、スタジオ全体をサポートする役ですね。

初めて目にする機材などもあったので、自分でたくさん勉強しました。ライトの角度によって光の感じも変わるので、自分でテストを重ねることも。

あと、スタジオのオーナーに大学時代に撮った写真を見せてアドナイスをもらったり、空いている時間に撮影したり。出来ることは何でもやりました。周りは専門学校出身で写真をガッツリ学んできた方も多かったので、人一倍、人十倍は努力しないといけないって思ったんです。

2年経って契約が切れるタイミングで、フォトグラファーの方に「残ってアシスタントにならないか?」って声をかけていただいて。専属のアシスタントとしてさらに2年半ほど経験を積みました。

トータル4年半の下積みを経て、念願のデビューを果たしました。

その時点ではフリーとしてでは無く、事務所に籍を置いてです。

4年間の下積み時代は、もちろん辞めたくなることだってありました。でも、写真が大好きで、自分にはカメラしか無かった。

勝手に上京して就職したし、親も反対せずに出してくれたし、頑張りたかったんです。どこかで覚悟も出来ていたのかもしれません。覚悟が出来たら、あとはその道を進んでいくのみですから。

― デビューして感じた、自由度の高さ。

   でも、自由なのに“個性”が無かった。

カメラマンデビュー後、まず頂いたお仕事はどんなものでもすべて引き受けました。デビューおめでとうという意でいただくお仕事もあったので、感謝の気持ちもあったんです。

少しずつやりたい仕事をやったり、自分で仕事を選んだり出来るようになっていって。

知人のライターさんから仕事の依頼をいただいて、雑誌『Seventeen』などのファッション誌の撮影もさせていただきました。

アシスタント時代と明らかに違ったのは、自由度の高さですね。

アシスタントの時は師匠の言うことが全てなので、自分はもっとこうした方がいいかなって思っても、師匠がOKならOKでした。デビューしていざ自分を出していいってなると、よく聞こえるじゃないですか。自由にのびのび出来そうだなって。でも、最初は戸惑ったんです。「師匠だったらどうするだろう?」って考えて、師匠のマネをしようとして。

そしたら、兄弟子に「お前の写真は優等生すぎる。個性がない。いい子ちゃんの写真だな。」って言われて、ハッとしたんです。自由なのに、私らしさがどこにも無かった。

変わるキッカケは、小学館の『edu(エデュー)』という雑誌の創刊でした。

当時、『edu』は写真集っぽいつくりで、それこそほとんど自由に何でも撮影して良かったんです。イメージに合っていれば、独特の色合いを出してもいいし、絵コンテ通りの写真じゃなくてもよくて。この経験が私にとってものすごく大きかった。自由にやるという感覚を取り戻すことが出来たんです。

今では撮影時に「こうしたほうがいいんじゃない?」という意見をどんどん伝えますし、信頼してくれているスタッフさんは「撮影はアベさんにおまかせしますね。」って言ってくれるんです。自由にやる楽しさを、今はちゃんと掴めていますね。

― ママになっても、仕事を続けられた。

   それは、主人の理解があったから。

妊娠・出産した後は子ども中心になるので、やっぱり仕事はセーブしなければいけませんでした。ママの宿命かもしれません。

その中で、『たまごクラブ』担当者の方から、雑誌業界で活躍するママたちが妊婦ファッションについて対談をするという企画の話をいただいて。それをきっかけに「落ち着いたら、カメラマンとしてのお仕事もお願いできますか。」とお声掛けいただいて。子どもが2歳になった時に、連載ページを持つことになったんです。ミラーレスカメラで子供を可愛く撮影するというテーマで、3年連載しました。

あと、雑誌と連動した『たまひよパーク』というイベントで、子どもを上手に撮影するカメラの講座もさせていただきました。妊娠して出産して、子どもがいるからこそ出来る仕事って、思っている以上にたくさんあるんだなぁって思いました。

実は、出産した後にフォトグラファーを続ける女性って本当に少ないんです。

体力勝負で時間も不規則な仕事なので、諦めちゃうことの方が圧倒的に多くて。うちは主人がフリーのグラフィックデザイナーで家仕事も多いので、家事を分担してやってくれています。あと、私の仕事もちゃんと理解してくれているので、続けることが出来ているんだと思います。保育園や区のベビーシッターのお世話になるにしても、やっぱり家族である夫の理解って大きいし、本当に心強い。

旦那さんがバリバリ仕事をしている方でも、やっぱり“話し合うこと”や“お互いの状況を共有すること”ってものすごく大切なことじゃないかなって思います。

― 素直に面白いから、個展のテーマは“娘”。

   10年経っても、新しい気付きがたくさん。

2013年に独立してからも、フリーのフォトグラファーとしてさらに仕事を楽しんでいます。もちろん主人や娘に支えられながら。

そして昨年、カメラマンデビュー10周年を迎えました。今年はその集大成として個展も開催するんです。テーマは、モノでも風景でもなく、自分の娘。

というのも、昨年の夏に家族でスウェーデンに旅行した時に、現地の雑誌を買ったんですが、ふろくで付いていた縄とびを娘がものすごく気に入って。11日間の滞在中ずっとぴょんぴょん飛んでいたんです。その光景が何だか面白くて、私も11日間ずっと“縄とびムスメ”を追いかけてカメラを構えていました。風景を撮るつもりだったのに(笑)

それまでは娘を被写体にするってちょっと抵抗がありましたが、素直に面白いと思って自然にシャッターを押したんだからいいよねって思うことが出来て。カメラマンデビューしてもう10年ですが、10年経ってもこんな風に新しい気付きはたくさんです。というか、人生は新しい気付きの連続ですね。

個展もそうですが、自費出版で写真集も出す予定なのでとっても楽しみです!

やりたいことがちょっとでもある人は、自分にワガママに生きて欲しいです。周りが何と言おうと、否定しようと、気にせずに突き進んでいって欲しい。

人生は一度きりですもん。

私も、事務所から独立してフリーになる時に「やめたら?」ってとめられたんですが、自分の人生だから自分で選択しました。正しいと思って選んだことに後悔はしないけど、人に言われたからって選んだことはきっと後悔しちゃうから。

自分のやりたいことがまだ見つからない人は、まず色んな人と話してみて下さい。様々なジャンルの人に逢って、相手の生き方を吸収する。自分の考えに偏らないこと。そうしていくうちに「この言葉が胸に響いたな。」「この人の生き方がいいな。」って、自分に合うものが分かってくると思うので、それから選択していったらいいと思います。

考えすぎず、焦らず、肩の力を抜いて、自分の人生をつくっていきましょう!

【個展情報】

アベユキヘ写真展『Hippity Hoppity』

2015年5月26日(火)~31日(日)

11:00~19:00(※最終日のみ17:00まで)

渋谷ギャラリー『LE DECO』2階


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